Kudanを知る「6つの視点」

5

大手が戦いづらい領域で固める非競争戦略

オープンソースではなく、商用向けに専門開発された技術に需要

 人工知覚(AP)の競争環境は、人工知能(AI)とは大きく異なり、少数精鋭の新興企業でも競争力を発揮しやすくなっています。

 人工知能(AI)は、アルゴリズムとしては非常にシンプルで、大手を中心にオープンソースも公開されており、そこで熾烈な競争は起きていませんが、一方で性能を左右するデータ学習(参照リンク)のためのデータの量と質や、膨大なデータ学習をこなすための計算機資源が求められます。このことを背景として、資本力で圧倒する米国や中国の巨大テック企業が、データの囲い込みと、サーバー等の計算機資源とその運用に巨額資金を投じて互いにしのぎを削っています。

 他方で人工知覚(AP)は、アルゴリズムは人工知能(AI)の数千倍と複雑であり、ハードウェアを含む開発環境も必須となるので、オープンソースが実用的でなく、アルゴリズム自体の発展が大きなチャレンジとなっています。その複雑なアルゴリズムで競争するには、地道な技術開発の蓄積が一番重要となり、Kudanのような専門企業が希少人材を囲い込んで開発することで競争力を発揮しています。

 また、地域による差分も出ていますが、巨大テック企業をかかえる米国と中国が、資本力という自らの強みを活かし、需要の立ち上がりが早い人工知能(AI)に注力したがゆえに、比較的ニッチに残っている人工知覚(AP)の領域では、欧州が第一線となっているという見方もできます。

非競争の棲み分けが進み、Kudanは世界最大の独立専業に

 その欧州を中心に登場してきた人工知覚(AP)の新興企業は、2010年代に多く誕生しましたが、これまで棲み分けと統合がかなり進みました。

 大きな動きとして、いわゆるGAFAと言われる巨大テック企業が、メタバースに応用する目的で多く買収が進みました。拡張現実(AR)や仮想現実(VR)のための空間技術としての囲い込みが起き、これらの技術の流れが、例えばMeta社のQuestやApple社のVision Proなどの製品につながっています。

 一方、ロボティクスやデジタルツインなど、メタバース以外の汎用的な技術は、その分野でリードしていたKudanがArtisenseを買収したことにより、独立専業の企業として世界最大のグループとなりました。現在Kudanはグループでは人工知覚に特化した専門技術者を30名程度抱えており、人工知覚の深層技術に集中しているチームとしては、世界最大規模となります。

大手が参入できない市場における標準技術を確立する

 こうした棲み分けと統合により、Kudanは大手テック企業が参入しづらい領域で陣を取り、足場固めを進めています。

 先述の通り、大手テック企業はメタバース寄りに注力していて、また事業領域の特性から個人向けの製品サービス中心に競争が激化しています。一方、Kudanが注力するのは、私有空間も多く含む企業・産業向けのロボティクスやデジタルツインです。これら領域の最終顧客は自社システムの利用、データの自社保有・機密保持を重視しており、顧客とデータ競争してしまうGAFAのような企業は参入が難しいのに対して、顧客の利益とぶつからずに深層技術として黒子になれるKudanのような専業企業が重宝されます。

 大手企業にとって参入しづらい市場がまだまだオープンとなっている中、Kudanはデファクトスタンダード(標準技術)を確立し普及することを目指しています。